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親父倶楽部 第40回例会 記録

テーマ・・・親父達のプロジェクトX 第2弾
「イスラエルに幻の石を追え!」
    

     報告者 西 博康

◆日 時:2003年3月11日(火) 19:00〜21:00
◆テーマ: 親父達のプロジェクトX第2弾「イスラエルに幻の石を追え!」
◆担当者 中家祥裕
◆参加者:中家祥裕、赤松泰樹、河部誠、小野山義之助、東秀一、鈴木豪、西博康
◆会 場 ・・・・大阪市立東淀川勤労者センター

親父達のプロジェクトX第2弾
「イスラエルに幻の石を追え!」(中家祥裕)

テーマの設定理由
 2001年9月11日 あのニューヨークWTCで起きたテロの直後、
ある特別な事情により、政情不安なイスラエルに、幻の石を
探しに行かざるを得なくなった中家さん・・・。
ことわざるを得ない状況の中、死を覚悟し、家族との別れを告げて
一路中近東へ・・・
死の現実に直面した中で得たものは・・・、家族との絆とは・・・

ミッション インパッシブル・・・ 現地の生の映像を交えながら
一人の男の決断のドキュメントをお聞きください。


■1.イスラエル・ライムストンとは?
 建築用の外壁材で石は昔からよく使われています。御影石(みかげいし)などは、外壁や床材によく使われています。「御影」とは、神戸の御影地方の事、そこで採れた花崗岩(かこうがん)が良質だった事から、花崗岩の事を御影石と呼ぶのが、一般的になりました。建築用の石材には
 ■グラニット 御影石と呼ばれる「花崗岩」 内外壁・床材 墓石などにも多用されている
 ■マーブル 「大理石」 主に内装用の石種
 ■ライムストーン 「石灰岩」 流行としては比較的新しい石種、主に内壁材に使用される
 ■サンドストーン 「砂岩」 流行としては比較的新しい石種、主に内外壁材に使用される
などがあります。火山国の日本でも、かつては色々な種類の石が採れましたが、最近はほとんどが輸入に頼っています。
近年は、昔からの採石場が取り尽くされた所もあり、世界各地に新しい採石場を探している傾向があります。

そのような中で、デザイン上、新しい色調や感覚の石材を求められる傾向にあり、
ライムストーンは、石灰岩といって比較的軟らかい石なのですが、御影石や大理石に無い独特なソフトな仕上がりになる石です。おもな産地は、フランス・ポルトガル・トルコ・アメリカなど、色調は白、アイボリー、ベージュ系のモノトーンのものが多い。
大理石にくらべて粗粒だが、化石や空隙など独特の風合いがあります。
石灰岩ですから酸性の水に弱く、内壁用の材料ですが、良質のものは、外壁に使えるものもあります。

イスラエルでも、ライムストーンが採れるようですが、商品としては一般的なものとはなっていません。
ベージュ色の柔らかな色調は、他の石とは違った感覚があります。

■2.イスラエル渡航までの経緯
2001年10月の事だった、関西で石材業を営む、中家さんの携帯が鳴った・・・、
「イスラエルライムストーンを手に入れて欲しい」と。
電話の主は、某工事会社の責任者だった。
施主の強って要望でイスラエルライムストーンで建物を作りたいと。
ただそこに大きな問題があった。
施主に提示したのは、白いイスラエルライムストーンだった。
しかし、実際に国内に入手できていたイスラエルライムストーンは、白いものは極僅かで、
そのほとんどが色の濃いものだった。
当初、その石を持ち込んだ石材店も元請の工事会社も責任を求められていた。
イスラエルライムストーンを持ち込んだ石材店も打つ手無しのギブアップ状態。

もともと、中家さんと電話の主とは、何ら係わり合いの無い存在だった。
「袖刷りあうも、多少の縁」程度の関係だった。
しかし、彼に望みを託されていた・・・。

イスラエルライムストーン

どちらも同じ石。
今回必要とされた石は
右側の白い石。
右と左とでは、白と茶色ほど
違っている。

■3.イスラエルを取り巻く国際状況
2001年9月11日世界中が凍りついた。
ニューヨークのWTCにジャンボジェットが突っ込むと言うテロが起きた。
中東情勢は緊迫化していた。イスラエルもまたそうであった。
当時の外務省海外危険度情報では、
危険度4(家族等退避勧告) 
 西岸・ガザ地区
危険度3(渡航延期勧告)
 上記以外のイスラエル本土

イスラエルの国内では自爆テロが頻発していた。
繁華街やショッピングセンターは格好のテロのターゲットになっていた。
治安も悪化し殺人の発生率は日本の2.3倍、強盗・強姦は12倍となっていた。
入手した情報では、イスラエルライムストーンの産地は、ガザ地区のすぐ南側であった。

イスラエルの状況を説明する中家さん





■4.決断
彼は、呼ばれて、彼の依頼者と施主の前に立っていた。
見本にされた白いイスラエルライムストーンと
実際に数が揃うイスラエルライムストーンとを、彼はその時初めて見た。
彼の目にも、全く違う石に見えた。
施主は、白いイスラエルライムストーンで建物が出来上がる事を切望していた。
依頼者は、最期の望みを彼に託していた。
「お願いします」と言われたらやるしかない、と彼は思った。
このお客様に言われたら「よし、絶対にやってやろう」と感じていた。
彼は、その時決断した、実際に現地に行って実態を調べなければ何も判らない。
俺が行って探してこよう。白いイスラエルライムストーンを入手するんだ、と。

しかし、彼は、イスラエルの石など扱ったことなど無かった。
たまたま話を聞く一月ほど前、イタリア北部のベローナという街で石材見本市にて、
これまでお付き合いのあるインドの石材会社の紹介でイスラエルの石材会社と
名刺交換した事があった程度で、そこだけが頼りの綱であった。

■5.家族との別れ
彼は、出発の準備を始めた。
渡航の段取りを行う度毎に、現地の危険な状況が認識された。
彼は、英語の達者な大学時代の後輩を誘った。
後輩は、躊躇した。でも、彼は言った、
「イスラエル人が全員死んでヘンで、だから大丈夫や」
後輩は、うなづいた。

出発の前日、彼は一日幼稚園年中と小1の二人の子供達と遊んであげた。
彼はその時思った、俺は、今までこの子達に親として教えてきたのだろうか・・・と。
最期の晩餐とも言うべき夕食を家族4人で行った。
そこは、近所のうどん屋だった。
自らの感情を抑えながら、彼は2人の子供に色々な想いを伝えたかった。
俯き加減に彼は話し出した。
「お父さんは、これから出張に出掛ける。でも、この出張は、長い出張になるかも知れない。
とっても長い長い、帰って来れない出張になるかも知れない。
お前達に二つの事を話しておきたい。
ひとつは、お母さんをずっと大切にしてほしい。
二つ目は今、神様の違いや生まれた場所の違いで、皆喧嘩ばかりしてるけど、
大きくなったら世界中の人とお友達になって、みんな仲良くしてほしい。」
彼の口からは、そんな言葉しか出てこなかった。
一生懸命勉強しなさいなんて言葉は、思い浮かびもしなかった。
彼の言葉の横で、奥さんのすすり泣く声が聞こえた。
彼は、今一度、子供達の顔を見ようと顔を上げた、しかし、目の前にあったものは、
うどんの”なると”を取り合っている2人の子供の姿であった。
「お兄ちゃん、このうどん、美味いなー」
子供達は、親父の話など何一つ聞いておらず、うどんに熱中して頬張っていた。

子供達の普段と同じ様子に、彼自身の緊張がほぐれた。
同時に、絶対に無事に帰って来るぞと、気持ちを新たにした。


■6.イスラエル滞在
入国までは、各地の空港で厳重なチェックを受けた。
日本人は、かつてイスラエルでテロリストとして悪名高き国民であり、
日本人男性は警戒された。
目的は?と尋問され、彼は同じ言葉を繰り返した、
”Looking for Israel limestone!” と。
格納庫の中に呼ばれ、彼の荷物が改められた、爆弾等の持込が無いか
厳重にチェックされた。
かくして、彼はイスラエルに辿り着いた。


遂にイスラエルライムストーンの
採石場所に辿り着いた

野帳場(採石場)で、白いライムストーンを
探している旨を説明する中家さん

イスラエルライムストーンの産地は、イスラエル
の中でもこの地域にしかないことが判明した。

石の切り口を確かめる。
確かに、イスラエルライムストーンは、あった。しかし、そこにしか無かった。中家さんは、何はともあれ、
産地を突き止め、特定できた事に安堵感を覚えた。しかし、原石の状態では、石の表情までは確認できない。
石は、鏡のようになるまで磨き上げて初めて、美しさを出す。原石のままでは、白いライムストーンなのか
茶色いライムストーンなのか、判りにくい。
彼は、白そうな原石を曳くように手配した。工場は、イスラエルの北端にあった。

採石場所と地層を説明する中家さん

採石場のそばには、隕石が落ちた痕があった。
崖の深さは300m クレーターの直径は250kmに及ぶ。

工場まで、陸路砂漠の中を600km移動した

途中で立ち寄った繁華街。イスラエルライムストーンで
出来たビルがあった。しかし、繁華街はテロの危険が
潜んでいた。

イスラエル北端の石の加工工場に着いた

その工場は、国境の国連軍の部隊に程近かった

早速、白っぽい原石を曳いてみた・・・

日本から持参した白い石と曳いた石を比べてみた。
だが、石は求めている白さは無かった。
白いイスラエルライムストーンはそこには無かった。彼は絶望のどん底にあった・・・。


■7.調査を終えて
イスラエルライムストーンは、確かにそこにあった。しかし、そこにしか無かった。
調査の結果、白い部分は、全体の5−10%程度の割合で存在し、残りの部分は
色の濃い石となっていた。
白い石で建物を作り上げる為には、必要量の石の20倍の石が必要となった。
金額の問題以前に、石の採掘だけで、1年以上の歳月を要する事が判明した。

■8.オーナー及び関係者の涙、そして建物の完成
・・・帰国し、私は事実だけを淡々とお伝えしました。
オーナーのどうでした?との問いかけに、思わず、「大変でした〜!」関西弁で答えました。
オーナー始め、関係者が皆、事実を受け止めてくれました。
今、日本にある石も、白いのは約1割だけです。それを正面に使用し、
色の濃いものは、その他の面に使用するとのことでと、オーナーも納得して頂けました。
使う石を一枚一枚吟味し、建物全体の外壁の石の使い方をこまめに決めて、3ヶ月振りに
中断していた工事が再開しました。かくして工事が完成しイスラエルライムストーンの建物が
完成しました。、

■9.家族の絆とは・・・人と人との関わりとは・・・
話の依頼を受けたのも、イスラエルへの伝となった会社とも、
本当に、些細なきっかけで知り合った程度の関係でした。
しかし、そんな事が、自分の生死を賭けたプロジェクトを行う事となりました。
結果として、係わられた方皆さんが納得出来るものとなり、色々な方に喜んで頂けました。
そのような中で、幸せの価値観が変わりました。
家族と今までと変わりなくただ皆で生きていること程、幸せな事はないと感じました。

                                            以上


■話を聞き終えて・・・


Aさん:戦争地域では、保険は免責となり、保証はされません。
    大変なことだったと思いますし、無事に戻られて本当に良かったと感じました。
Bさん:今日の親父倶楽部中家さんの話に感動しました。
    某会社の某氏がちょっと知りあいだった中家さんに
    電話をしたことから始まった石探しです。
    なぜ、某氏は中家さんに電話をしたのでしょうか。?
    中家さんもそれは某氏に聞いたことがないと言われていました。
    それも何かの縁でしょうか。
    引き受けた中家さんに男意気を感じました。
Cさん:ご参加された方々は、いろいろと感ずるところがおありだったと思います。
    私は、ドキッとするほど心の中に突き刺さるものを感じました。
    何回かしかお会いしていないのに、人格を言うのは誠に僭越至極ですが、
    中家さんのお話振りを聞いていると、人間性が一言一言に滲み出ていて
    「あ、この人当たりが、すべてを表しているな」と思いました。
   
    「テルアビブ」「ガザ」「ゴラン高原」・・・聞いただけで足がすくんでしまう
   ような場所へ、飛び込んで行く。何がそうさせるのか、自分の仕事に置き換
   えて考えてしまいました。私ならばどう判断し、どう行動するだろうか。
   一言一言、そして行動の一つ一つに自分自身を照らしてみました。
   本当に考えさせられました。

   ◎ 私が唸ったフレーズ
   ★『「お願いします」と言われたらやるしかない』
    自分の仕事に対する自信と誇りと責任感を強く感じました。天職と思っていないと
    なかなか出てこない言葉ではないかと思った次第です。

   ★『このお客様に言われたら「よし、絶対にやってやろう」と思った』
   私も営業部門で30年以上メシを食わせて貰っていますが、このフレーズは良く分
   かります。私も少ないながら経験した事例がありますが、手強い客様ほどやる気が出
   てくる、これに勝る営業力はないと思います。自分の仕事に立ち向かう気概、すばら
   しいです。給料だけのために働いている人には、これがなかなか出来ません。理由が
   先に出てきてしまいます。

   ★『帰ってきて、お客様には事実だけを淡々と説明した』
    実は、これはもっとも難しいことの一つと思います。普通、どうしても仕事をう
   まく収めようとして、打算や経済合理性が入り込んで、言葉の端々に恣意が入り込ん
   でくるものです。中家さんのお話し振りは、本当に事実だけを述べている風景が見え
   ました。事実だけを伝えると、判断はお客様自身がすることになりますので、納得し
   て頂くには一番良い説明方法と思うのですが、これがなかなか出来ません。私心が全
   くないこと、無私の状態で話が出来ないと、本当に相手の心には素直に入り込んでい
   かないと思うからです。これも人間性が背景にないと、真似してすぐ誰にでも出来
   る、というものではないでしょう。
   自分の仕事に滅私奉公が出来る、これは私の求める理想の天職なのですが・・。

   考えさせられることが沢山のプロジェクトXでした。
   中家さん、皆さん、ありがとうございました。
                                      
 

■第40回親父倶楽部を終えて   
                                 西 博康

 本日は、親父倶楽部にご参加頂きまして有り難うございました。
本日は、中家さんに「親父達のプロジェクトX第二弾 イスラエルに幻の石を追え」をお話頂きました。
自分の仕事とは全く係わりが無かった相手の方から、あるきっかけを頼りに理不尽とも言える
依頼を受けた中家さん。
その業務の遂行には、自らの死と引き換えにせざるを得ないミッション。
彼が感じた引くに引けない男の意地、しかしそこには、
妻と小さな子供達との生涯の別れを暗示していた・・・。
本日の親父倶楽部は、そんな中家さんが感じた生き様を切々と語って頂きました。
本日ご参加された皆さんには、人が動かされて人が動いた、そして
そのことによってまた人が動かされた生々しい感動と
生きている事の幸せの意味を感じて頂けたのではないでしょうか。
中家さん、本当に有り難うございました。
本日ご参加の、皆様、本当に有り難うございました。

                          






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親父倶楽部 「第40回例会記録」
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